ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

ほんとの気持

妻とふたりで娘の寝顔見ながら「いろんな気持になるね」と言いあった。すべての雑音をかき消してしまう穏やかな寝顔が喚起するいくつもの感情と思考と心配ごと。「いろんな気持」という曖昧な言葉で、ある程度理解しあえてしまうのは、僕らが彼女の親だからか?

 

「気の持ちよう」なんて言葉があるけれど、いろんな気持はどう扱えばいいのか。そのなかから、一個だけ選べばいいのか、いくつか選びとってブレンドすればいいのか、あるいは気持なんてすべて殺してしまったほうがむしろ「いろんな気持」に対して誠実なのかもしれない。そうやって迷ってるあいだに勝手にいろんな気持が虹のような独立した複数の曲線を描いたらいいけれどそんな都合のいい話はあるわけもなく、いろんな気持は互いの境界を侵食して澱んでいく。どんな気持があったのか、僕はもう覚えてない。思い出そうとして明日彼女の顔を見やっても、もうその寝顔は昨日とは僅かに違っているし、僕だってもう昨日までとは異なってしまっているし、なにもかもをこうやって取りこぼしてやり過ごして生きてきたな。

 

後悔は甘美だ。失ったものを正確に把握する理性を持ち、かつ、その喪失を嘆く感受性も持ってる、という確認作業が、慰みになっているのかもしれない。「ほんとの後悔」を知らないといったら、それまでだけど。

 

時の流れは速く

もう三十なのだけれど

あぁ、僕に何が残せるというのだろう

Mr.Children「1999年、夏、沖縄」

 

手を抜け 気を抜くな

時々怠けるな

大活躍するのを待っている

奥田民生「人の息子」

 

2004年11月22日

チン中村26歳誕生日

なんとなく僕たちは大人になるんだ

銀杏BOYZ「なんとなく僕たちは大人になるんだ」

 

もうとっくにそういうんじゃないんだけどなぁ。