ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

2016-01-01から1年間の記事一覧

彼/女

ちょっと今日会えないかな、とメールが来た。朝と昼のあいだのその時刻、俺は女とビーチにいた。そう伝えると「じゃあ海浜電車で今から向かう」との返信。 これから友だち呼んでもいいかな、と尋ねると女は「ダメって言ってもいいの?」と笑った。 2時間後、…

シンゴ

今日こそ勝つ、と決意した。 背の低いシンゴの太い首を握る右手に、俺は力を入れなおした。ここで手を離すから、いつも逆襲を喰らうのだ。でも、もう潮時だ。勝たなくてはならない。 これまでの俺は勝利におびえ、勝者の責任から逃れたくて、負けていたのだ…

別れと出会い

上京してからというもの、年末は12月27日あたりに帰省することが多かったせいで、なんだかそわそわする。本当にきょう飛行機乗らなくていいんだよね?しかし、無職だからこんなそわそわを味わえるのだね。27日火曜日ってまだまだ仕事納まらないとこばかりだ…

足場

朝、完璧な眠りに落ちかけたところで、ベッド脇の大きなガラス窓が乱暴に揺れて目が覚めた。窓の揺れる音と共に「すみません!すみませーん!」と大きな声もする。 1ヶ月ほど前から、このアパートは四方を鉄の足場に囲まれ、布を被された。外壁工事が行われ…

思い出したら泣けてきた。俺はマザコン。

いじめられたような思い出をさっき書いたけど、 やっぱりあれはいじめとはちょっと違うかもしれないと思えてきた。 ベランダに締め出された俺をガラス越しに観察したり、ジャンケンで示し合わせて俺をひとり負けさせた彼らは、当時それをいじめだと認識して…

顔面を蹴り上げる男 ~給食当番制反対~

人生でいちどだけ、顔面を蹴り上げられたことがある。 中学3年生。それまでゴミ袋に放り込むだけだった牛乳パックを、リサイクルのために、きれいに洗って広げて干して乾かすというルールができた。それは大して面倒なことではないのだけれど、そういう改革…

クソガキ

「少年が主人公の小説に欠けていて、少女が主人公の小説では描かれているもの、それは他者に真実を告げるか告げないかの葛藤だ」みたいな文を目にしたことがある。俺は小説をあまり読まないので真偽のほどはわからないし、そのような印象を抱くことすらでき…

ハードボイルドフィアンセ

6回目の鑑賞を終え映画館を出たらそこは焼け野原だった。俺は瓦礫のなかを早足で行く。前を行く家族を追い越すとき、そのなかにいたおじいさんの足に、俺の足が引っかかってしまった。彼は転んだ。しかし先を急いでいた俺は立ち止まることなく振り返って謝っ…

毎日は手作り

模様替えをしたら案の定、鼻がつまった、眉の裏側が痛い。 きょうは5時の鐘を表参道で聞かないといけない、表参道に5時の鐘は鳴らないか……。 目覚めてからだいぶ経つ。きょうは早々に小便に行った。ベッドに戻ってきて、カーテンを少し開け、底ぬけ(天抜け?…

5時の鐘

パンツは洗いそびれてしまったから、水着を履いて寝た。半袖のTシャツに水着、羽毛の布団に包まったまま、テーブルに置きっぱなしのコップに入った麦茶を飲む。マクドナルドでもらった背の高いコカコーラのコップ。暗い部屋でベッドに溺れる。天気がわからな…

<ハンドメイド下北沢>にて 〜「下北沢にて'16」大森靖子

下北沢駅近辺のライブハウス各所で同時多発的にライブが行われるサーキットイベント「下北沢にて'16」にて、大森靖子のライブを見た。個人的には「大森靖子生誕 大コピバン祭2016」以来の下北沢GARDEN。 GARDENにおもむく前、Lagunaでクリトリック・リスを見…

読むに値する文章

書こうと思っても書けないときはスマホで書くに限る。ということで、この文章はボロボロのスマホよりお送りいたします。 自分専用のパソコンを持ったのは上京してからのこと。専用パソコンももう2代目で、実家にいるころよりもタイピング自体は速くなったけ…

「大森靖子の続・実験室 vol.23」ラフレポート 大森靖子のファンとの距離感

ZEPP TOKYOでのツアーファイナルから3日後の11月21日、大森靖子ファンクラブ「実験現場」会員限定イベント「続・実験室 vol.23」が、新宿ロフトプラスワンで行われた。客から集められた感想アンケートに従って、ツアーを振り返るのがこの日のイベントテーマ。…

エドワード・ヤン『タイペイ・ストーリー』(1985年)雑感 

ちょっと前に東京フィルメックスで『タイペイ・ストーリー』見た。主演のホウ・シャオシェンからビデオメッセージが届いていますのでそちらからご覧ください、って言ったかと思えば、そのありがたいメッセージが流れる前のスクリーンには、5分間、さまざまな…

人はすごい

俺は、ポップミュージックの自作自演家がもっともかっこいい存在だと思う。自身の歴史と感性を道具に作物をつくりあげ、それを身体ひとつで何度も何度も人前で再現するに留まらず、革新していく。同時に、活動が続くにつれておのずから更新されゆく己の歴史…

「あなたをフォローしています」  大森靖子 Tokyo Black Holeツアーファイナル in ZEPP TOKYO感想文

たとえば、フォロー数10000人のアカウントにフォロバされて、その人について言及したらエゴサされてふぁぼられて、って、そんなことされても俺は全然嬉しくならない、どうせ俺のつぶやきのすべてをこの人は見てくれるわけがない、と思うから。でも大森靖子の…

大森靖子生誕 大コピバン祭2016(9.18 下北沢GARDEN)の遅すぎてちょっと長い感想文

きのうは「大森靖子生誕 大コピバン祭」に行った。と書きはじめてからだいぶ経ってしまった……この間、発売延期で心配していた大森さんのニューシングルは、小室哲哉作曲というビッグニュースがあったせいか、もうコピバン祭も遠い過去のように思える、と書い…

フラッシュバックに救われる 『ハドソン川の奇跡』感想文

USエアウェイズ1549便は、何度も墜落し何度も着水する。 現実ではたったいちどの「奇跡」だった不時着が、機長の記憶として、フライトレコーダーの記録として幾度もフラッシュバックで再現される一方で、機長はもうひとつの可能性、つまりニューヨークの街中…

財布無くす

また財布を無くした。こないだ楽しかったディズニーランドのビッグサンダーマウンテンで無くしてから半年、また無くした。 よくモノを無くす、財布、ビニール傘、鍵、本、マフラー……。大切な日にもらったモノをまた別の大切な日に無くし、ハタチも過ぎたのに…

グッド・モーニング

今日は予定があるので早起き。絶対に目覚めたい朝は、カーテンを開けておく。朝日で目覚める。俺にとって「絶対に起きなくてはならない朝」は年に何回あるんだろう。毎日カーテンを開けておけばちゃんと起きられるじゃない、と思われるかもしれないが、朝日…

「なにがおもしろいのかぜんぜん分からない」

「なにがおもしろいのか分からないけどとにかくおもしろい」と「なにがおもしろいのかぜんぜん分からない」は、分からないのはお互いさまなのに、後者の方が偉そうにしていることが多い気がする。 「なにがおもしろいのかぜんぜん分からん」人たちは、ある対…

人生のハッピーアワー 濱口竜介『ハッピーアワー』感想文

ちょっと前に友人4人で温泉旅行に行ったとき、どんな小さいことでもいいから今まで言わなかったことを言いあおうということになった。けれど、誰も口火を切らない。俺たちは本当になんでも言いあっていたので、言うことがなくてみんな困っていると思ったら、…

六本木-渋谷(10.30のハロウィンモーニング)

オールナイトで映画(『ハッピーアワー』)を観終わり、まだ暗い朝の道を、六本木から渋谷まで歩く。電車賃を少しだけ浮かせることと、ハロウィンに盛り上がる渋谷を見物することが目的だ。映画の残像を頭のなかでぐるぐるさせながら早足で歩く。 西麻布交差点…

午後の電車

しとしとと雨が降る秋の午後の改札口は出たり入ったりする人たちの数のわりに静かで、運動会の閉会式のようなけだるさがあって、ピンポーンという機械の音だけ響くのが、少し寂しくて気持ちいい。夏の頭のなかは「暑い暑い」のうだりでいつもうるさいし、冬…

霊言

「『たった1日でころころと言動が変わってしまう人とは、どんなに時間をかけても信頼関係が結べないのだな、と、とてもよく分かりました。気づくのが遅すぎましたね。もう諦めます。ありがとう』 ここまで書いたのに、送信できなかった。このメールを送った…

「他の女のとこにタワー建てにいくのね!」

けっきょく、ほとんどすべての営みは、環境のなせるわざだと思うし、どんなに体調が悪くたって、働かなくてはならないのなら、フラフラしながら家を出るはずなのだ、と、車内広告(「風邪でも、絶対に休めない あなたへ」)を見て思った。 愛子さまがずっと…

悪夢

夢をよく見る。鼻づまりが原因だと思う。十分に息が吸えてないから、苦しくて夢を見る。苦しくて見る夢はだいたい「悪夢」と呼ばれるたぐいのものだ。飛行機がおっこちたり、車が崖から転落したり、刑務所に入れられたり、日常生活を送っているのだけれど過…

10月19日

東京国際映画祭(TIFF)の運営が最悪で、開催まで1週間を切っているのに、チケットがろくにさばかれていない、チケットサイトのシステムが脆弱なのが原因で、サイトにつながらない、購入画面までたどり着いてもホワイトアウトになる、決済完了したのに席が確保…

10月17日

Netflixでジャド・アパトー『LOVE』を中盤まで見て、『昭和元禄落語心中』最終巻を読むだけの1日、つまり良い1日。『LOVE』でブロンド美女ジリアン・ジェイコブス演じるミッキーの、心のなかはズタボロなのに(だから)蓮っ葉な振る舞いがたまらない、ナードな…

10月16日

久しぶりに会ったキョウダイと新宿の焼肉屋に行く、うまい、また行きたい。「母の墓は海の見える丘の上にあるといいね」と言いながらキョウダイは、おもむろにスマートフォンで墓地を探しはじめた、「○○万円かあ、自分の貯金でいけるじゃん」というキョウダ…