ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

きっとかわいい女の子だから

「抜けた歯を土に埋めたらどうなるの?」と聞かれて「歯の持ち主がもうひとり生えてくるよ」と答える。娘はけらけら笑う。
生えてきた人は、元の人と見分けがつかないし、まったく同じ記憶を持っているから、どっちがどっちかわからなくなる。だから抜けた歯を勝手に土に埋めちゃダメだよと付け加えると、「ドッペルゲンガーってこと?」とか言い出す。6歳はそんな言葉も知っている。

 

保育園で誰かとケンカした話をしているが、帰り道はあまりに暑く、娘の話を聞く余裕はない。生返事をしていると「まぁ僕も悪かったんだけど」という言葉が耳に入ってくる。そんな微妙なニュアンスを話せるようになっている。

 

「時計を少し覚えたよ、1は5、2は10、3は15、4は20、5は…25、6は……」。娘は一日10時間くらい保育園にいて、先生と友だちのおかげでたくさんの刺激と学びを得ている。そうやって少しずつ知らない人間になっていく。

 

娘のことを知るように意識していかないと、いつのまにか他の子と見分けがつかなくなってしまうかもしれない。他の子と同じように接してしまうかもしれない。SNSなんか見てる場合じゃないんだよ。