ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

『マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディション』

マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディション』見た。タイトル長ったらしいけど要するに『怒りのデス・ロード』モノクロ版。

 

正直みんながV8V8言ってるころは全然ノれなくて、1回しか見てなかったから、これも見る予定はなかったんだけど、いっしょに見ようと言ってくれたから見た、ら、これがめちゃくちゃよかった。

 

https://youtu.be/n4htDY30vYQ

 

スクリーンに映る情報量がめちゃくちゃ多いオリジナルの『怒りのデス・ロード』は見ていてとても疲れたんだけど、そこから色を抜いたことによってシェイプアップ、かわりに描線と運動がくっきりする。

『ブラック&クロームエディション』はシンプルでわかりやすく、処理能力の遅い俺の脳みそにもすんなり入ってくる。だからようやっとカーチェイスのどこに焦点を合わせれば楽しめるのかとか、深いシワの刻まれた婆さんの顔の味わい深さとか、画面の中央以外にいる人物の視線や表情の妙とか、そういうのを楽しめた。あとカーチェイスは完全に『駅馬車』って感じだった。

一向が鉄馬の女たちと出会った日の夜の映像は白黒になったことでより鮮明に映っていた。パーフェクトに異世界。

 

白黒といっても白と黒のあいだのグラデーションがあまりにも鮮やかで多分オリジナルの豊かさは少しも損なわれていない、というかまったくべつの映画になっているといっても言い過ぎじゃないはず。ブラック&ホワイトで燃えさかる炎はとても美しい。

 

オリジナルを見たときは全然ストーリー、というか個々の人物に思い入れを持てなかったけど、今回はニュークスの生き様とか、マックスとフュリオサの友情とも恋愛とも言えない、無理して言うなら兄妹関係みたいな視線の交換やら血のやりとりとか、種を胸に抱いて微笑みながら息をひきとる婆さんに涙した。

 

なんか思ったけど、2015年の俺は無職になりはじめたばかりでえらく疲れていて映画を見て何かを感じるどころじゃなかったのかもしれない。『怒りのデス・ロード』は世界観の提示というよりも世界の創造なので、そんなのにはとても入り込めなかった。俺自身の世界が破綻しているところに別の世界を見せられても「知らねえよ」となるしかない。優れた映画も愚鈍な観客の前では空回りしちゃう。

今はもう開き直ってたのしく過ごしているので映画を見る余裕がある。これでいいのだ。