ストーカーチック
面識のある人たちの中でもっとも尊敬できる(尊敬している、とは違う)人がネット上に残した過去の言葉をさらっていた。まだ僕と出会って以降の文章にはたどり着けていない。ひとりの人間の時間がとても重たく実感される。
僕には、彼女に与えられるものが何もないから、だからせめて彼女の言いたいことだったり言わないようにしてることだったりを、上手にくみ取りたいなあと思う。思うからこんなストーカーチックなサルベージを始めてしまったわけだけれど、僕の悪い癖は、こんなにあなたのことを想って時間をかけたのに、なんであなたはそれをくみ取ってくれないんですか? と言葉にしないとはいえ、心のどこかで思ってしまうところなので、こんど彼女と話す機会があって、そのときこの発掘の成果をうまく発揮できなかったとしても、勝手に落ち込まないようにする。
さっき一瞬、「俺が彼女の言葉を読み漁っているように、誰かが俺のことを思ってくれてたらなあ」なんて考えてしまったのだけれど、これこそがまさに恩着せがましくて、一歩間違えるとストーカーになってしまう思考の典型なように感じられて、少し恐ろしくなった。だって、「誰かが俺のこと思ってたら嬉しい」なんてまったくのウソで、好意を抱きがたい人に、何年も前の自分の文章を振り返られてると知ったらやっぱりゾッとする……。ていうかサルベージだなんて立派な言葉つかうのもそもそも間違ってるな、墓荒らしみたいなもんだよこれは。
彼女の過去のことばは異様にポジティブかつハイテンションでびっくりしたのだけれど、そういえば彼女は、僕ともうひとりの友人の前で、「あたしが本当はバカで根暗な人間だってことを君たちは知ってるからラク」なんてことを言っていたなあと思い出した。
この文章はたぶんもし本人が自分のことが書いてあると知りながら読んでも、気持ち悪いとは思わないはず。なんかもっと他にやらないといけないことあるんじゃないの、とは言われるだろうけど。うーん、これも僕の思い過ごしなんだろか。