ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

あじさいはすぐに枯れてくれる

窓を開けている。夜風が気持ちいい。
酔っぱらいの歌声が聞こえる。たーりらーたららららーら、たーりらーたららららーら。
アース・ウィンド・アンド・ファイアー「セプテンバー」だ。あじさいが綺麗に咲きはじめたばかりだというのに気が早い(ちなみに「たーりらーたららららーら」でグーグル検索したらヤフー知恵袋の「それは『セプテンバー』だと思います」という回答がいちばんにヒットする。2010年12月2日)。


去年の7月、「終わり」とだけキャプションを添えて、枯れたあじさいの写真をインスタグラムに上げたら、友人が「夏のはじまりだね」というコメントをくれた。



梅雨が好きな人っているんだろうか。


むかしは梅雨なんて気にならなかったし、むしろ雨は好きだった。薄暗い教室の非日常感や、雨に濡れながら人を待つこと、父が日曜大工で取り付けた雨よけに跳ねる雨滴を聞きながら寝ることなんかが好きだった。インドアな少年だったから、雨で予定が吹っ飛んで悲しんだこともない。というか、大雨が降ったら部活が休みになったりしてハッピーだった。
大学に入って一人暮らしを始めてから雨が嫌いになった。洗濯物を干せないとか、靴が濡れたら困るとか、花火大会が中止になるだとか、低気圧で頭が痛くなるとか。雨が生活に与える影響にはじめて気づいた。雨が実際的に降ってきた。

 

2015年は、155日、東京に雨が降ったらしい。1年の42%は雨が降る。人生の半分近くは雨降りを生きるわけで、雨粒を見るたびにどよんとしてしまったら、かなり損だ。かわいい傘でも買って、丈夫な雨靴でも用意して、上等な乾燥機を手に入れて、副鼻腔炎の治療をすれば、むかしのように雨を愛せるようになるかしらん。

 

去年、友人がくれた「夏のはじまりだね」というコメントに僕は「それもはやく終わってほしい」と返信していた。

 

Ba de ya, say do you remember
Ba de ya, dancing in September
Ba de ya, never was a cloudy day

 

秋がいちばん好きな季節だ。きっとあっというまに来るだろう。

 

 

 

あ、そういえば、雨に濡れたアスファルトに照る夜の街のネオンだけは好きだ。夜そのものは実際的じゃないから。