ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

いまここ

暑気の余韻を残した午後7時の空気も、川の近くでは風に混ぜられるため過ごしやすい。

 

最初はこの乗換え駅でどこか適当な居酒屋に入る予定だったが、川が近いことに気づいたのでこの河川敷に来た。途中のコンビニでビールを買い、マクドナルドでナゲットを買う。マスタードをもらった。

 

高架下近くの河川敷のコンクリートの上に酒やナゲットが入っていたビニール袋を敷いて腰掛ける。高架下では若者たちがアウトドアテーブルを広げてかすかに騒いでいる。川向こうは東京で、こちらは神奈川。土地勘がないので景色に教わることは何もなかったが、地図がそう言っている。

 

高架を走る電車の落とす光が幅の広い柱に反射していて、水面のようだった。夜の海に潜り、鼻をつまみ、仰向けになって見上げた水面で揺れる月明かりがちょうどこんな感じだった。

 

恋人の後ろでは、夕陽のように赤い月が確実に高度を上げていく。僕の後ろでは、夜明けなのか日暮れなのか分からなくなる空をバッグにアーチ橋が堂々と川を渡る。

 若者たちはいなくなった。

 

 

やがて僕らは海の近くに越すことになる。そこでは彼岸と此岸を意識することはないだろう。小高い緑に囲まれ、穏やかに波が打ち寄せる浜辺がある、とてもステキな町だ。