ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

失時

娘を寝かしつけてそのままいっしょに寝てしまい、ふと目覚めたのは4時過ぎのことだった、と思っていたのに、歯を磨きながらふと時計を見たら、まだ1時半だった。

 

2時間半巻き戻った気分、というよりは、21時間半経過した感覚。微かだけれど、たしかに時間が歪んだ。もう俺は二度と、あっという間に経過した21時間半を取り戻せないだろう。これは言葉遊びではなく、事実として。俺は時間に置いてけぼりをくった。時間はいつも俺をあざ笑う、振り落とす、引き裂く。

 

外で仕事したほうがはかどるので、昼、外に出た。いつも行く駅上のデニーズではなく、商店街のサイゼリヤに入ってみた。入った瞬間、しまった、と思う。まず、チーズの匂い漂う店内が居心地悪そうで、チーズ嫌いの俺は顔をしかめる。次に、この店にはWi-Fiが飛んでないであろうことを直感した。チーズの匂いを鼻腔が感じるのとほぼ同時に、Wi-Fiの気配がしないことを肌で知る。これはきっと職場を持たないヤクザな稼業を営むがゆえの悲しい性。

 

店員に言われるがまま席につく。隣の男はドリアを食べながら赤ワインをデカンタで飲んでいる、再び俺はしまった、と思う。サイゼリヤに来て飲酒しなかったことがない。卓上のボタンを押し、白ワインをデカンタで頼み、パソコンを広げた。

 

飲みながら仕事していると、思っていたよりも作業がはかどってしまい、おののく。飲酒は恥を退けてくれるから、言葉選びのためらいも薄れる。文章を書くことを仕事にしてしまって、ほんとうによかったのだろうか。酒を飲みながらじゃないと、いい働きができないなら、その仕事は向いてないんじゃないかと思う。平日昼間、これから保育園に娘を迎えにいくというのに、ほろ酔いになってはまずい。でももうデカンタの中のワインは薄く残っているだけだ。