ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

僕ん家の猫はキジトラ

おととい猫が病気した、膀胱炎。

おとといの前日から、猫はあんまりおしっこをしなくなって、元気をなくしていた。夜には粗相をするようになって、おとといの朝、僕はおしっこのにおいで目を覚ました。

もうまったく元気がなくて、気が気でなくなり、ネットで調べた。猫が一日おしっこをしなかったらすぐに病院に連れていってください、とばかり書いてある。死にも直結する事態らしい。午後一番で病院に連れていくことにした。病院が開くまでのあいだも、猫はぐったりするか、トイレに行くかだった。でもトイレでは排尿できないらしく、フローリングやソファの上で漏らしてしまうのだった。

 

僕は、4歳になるこの猫と暮らしはじめて、まだ3ヶ月。妻の連れ猫である。
だから、できれば妻といっしょに動物病院に行きたかった。妻もそうしたがった。
でもその日の妻は、もともと仕事が休みだったけれども、体調がすぐれず、ふせっていた。けっきょく、午後になっても妻はとてもだるそうで、僕はひとりで近所の動物病院に向かうことにした。僕ひとりで猫をゲージに入れるのは無理なので、妻に手伝ってもらった。

 

近所といっても、歩くと10分くらいかかる。病気の猫を歩いて運ぶのは心配だから、タクシーを呼んだ。僕は車を持たない。

 

病院に着き、猫の情報を問診票に書く。しかし、僕は彼の毛の色もわからないので、空欄で出した。オスで4歳で、昔になんらかのワクチンを打ったらしいことだけしか分からない。
診察室に入り、診察台の上に猫を乗せた。とりあえずカテーテルをいれて、尿を抜くとのことだった。尿と血液の検査をする。腎臓に影響が出ていないか調べられた。

オスで去勢された猫の尿道はひどく細く、もろいという。水を飲む回数も減ってしまう冬には、尿が濃くなって結晶ができる。このとき猫の尿はキラキラするという。キラキラしても、猫の尿はとても臭う。

 

カテーテルで尿を抜いていく。注射器5〜6本分の尿が取られた。そのあいだ猫はぐったりしている。診察台に乗せるとき先生に「この子はどんな性格ですか?」と聞かれて「ちょっとわんぱくかもしれません」と言ったのに、借りてきた猫状態だ。かわいそうになる。尿を抜いている先生に「今すぐどうこうってことは、ないですよね?」と聞いてしまう。自分の口からそんな言葉が出てくることにびっくりしてしまう。大丈夫だと思いますよ、という言葉に、比喩ではなく、胸をなで下ろしてしまった。


細い足に注射器を射されて血を抜かれ、首の後ろにも何本か注射され、なんらかの薬を投与された。抵抗することもなくぐったりした猫を見ていたら、泣けてきてしまった。彼の前両足を抑えていたのだが、その弱々しい顔を見てると申しわけないというか、かわってあげたいとまでは言わないけれども、いたたまれなかった。こんなことで心をかき乱されるとは思っていなかった。

 

もろもろの治療が終わり、会計する。食事療法になったので、キャットフードももらう。受付で「2万4千円になります」と言われる。2万円しか持ってなかったので(これでも多めに持っていったつもりだった)、後日払いにきますと言って、猫の入ったゲージを持って外に出た。
行きとは違って、タクシーを呼んでいなかったので、日暮れの強い海風を受けながら、早足で自宅に戻る。いちど腕が疲れてしまって、ゲージをアスファルトの上に置いたとき、「なんだか猫を捨てるみたいだ」と思ってしまい、慌ててゲージを引き上げた。

 

妻に報告したあとで、毛色が分からなかったと言ったら「キジトラだよ」と教えられた。
まだ動物病院に治療費を払いに行けてなくて、なんだかお金が惜しいような気がしてしまっているのが、我ながら現金だなと思う。明日、2万4千円、払いにいきます。
僕がもっと稼げばいいだけの話なのだから。

 

猫はすっかり元気になりました。