ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

昨日と今日のこと

昨日は1年半ぶりの友人とふたり、新宿で飲んだ。彼はいま札幌ではたらいている。研修で上京しており、合間をぬって会ってくれた。僕の結婚祝いということで遠慮なくおごられた。

1年半前に札幌に遊びに行った。そのころの僕はとてつもないニートで、甘ったれてて、引け目を感じていた。大学時代もっともシンパシーを感じていた彼が、着実に社会人とステップを重ね遠い存在になるのが寂しかった。そのせいで札幌にいるあいだ、つっけんどんに振る舞ってしまった。

夜中、明かりの消えた部屋でソファに横になり「お前は変わっちゃったよ。あのころのおれたちの鬱屈なんて、これっぽっちも覚えてないんだろ」と天井を見つめながら声を荒げた。恥ずかしかった。でも言わずにはいられなかった。

 

昨日の新宿では、屈託なく彼と話すことができた。嬉しかった、そして飲みすぎた。

 

今朝まで酒は残ってて、妻が起こしてくれたのにぐずぐずベッドに埋まっていた。午後から都内で予定があったので、なんとか起き上がった。妻が握ったおにぎりと具だくさんのみそ汁を飲んで、新品のグレーパーカーをかぶって出かけた。妻のおかげで元気が出た。

 

西麻布にあるIさんのオフィスで、原稿を直してもらった。約束の時間に遅れそうで、乃木坂駅から走ったら二日酔いは吹き飛んだ。

Iさんは1時間半かけて僕のみすぼらしい原稿に手を加えてくれた。7枚のペーパーをめくりながら「なんでこんなつまんねえこと書くかな」と苦笑いされたのが妙にうれしかった。そんな風に言ってくれる人は他にいない。「ここはいいな」と褒めてもくれる。まったく赤を入れられない箇所があると、にんまりしてしまう。

「原稿はなるべく白くしないとダメだよ。漢字ばかりで真っ黒な文章は読みにくいだろ。読者のこと考えなきゃ」と言われた。僕はよく「文章が硬い」と注意されるのだが、その原因はここにあったのだなあ。めちゃくちゃ基本的なことだけど、こうやって指摘されるまで、自分の文章がなぜ硬いと思われるのかわからなかった。とてもためになった。

読者のためを思って文章を書く、ということが僕にはぜんぜんできない。読者がわからない。

たまに「あの文章すごくよかったね」と言われても、自分ではどこがよかったのか見当もつかないことが最近はよくある。昔は、自信しかなかったのにな。

 

Iさんのオフィスを出て、恵比寿に向かって歩く。大森靖子と「TK from 凛として時雨」のツーマンライブに行くのだ。寒いうえに腹が減っていたので、ホットの「午後の紅茶 無糖」とクランキー・板チョコを買って歩きながら食べた。

広尾の商店街は賛美歌が流れていた。子供づれの女性が、向かいからやってきた同じく子供づれの女性とあいさつをかわしていた。広尾の商店街ですれ違う◯◯ちゃんのママと△△くんのママ。僕がいま住む町には、子供よりも杖をつく老人の方が多い。

 

恵比寿ガーデンプレイスに着いて、スタバに入って、1時間くらい作業して恵比寿ガーデンホールに入った。僕が大森靖子を初めて見たのは、3年前のここだ。その年の夏くらいから大森靖子を聞くようになってハマった。でもなんとなくライブに行くのは怖くてすぐには行かなかった。「恵比寿ミュージックウィークエンド」みたいな名前のイベントがあって、そこにZAZEN BOYSも出るからついでに見てみようと思って足を運んだのだ。内定をもらわないまま9月に大学を卒業した僕は暇を持て余していて、まさに「だれかを好きになりたくて仕方ない」感じだった。

はじめて見た大森靖子は、ブルーのワンピースに身を包み、カラオケで歌っていた。バンドセットなんてなかった。最後に弾き語りで「君と映画」をやった。ステージから降り、観客に囲まれて、マイクもなしに笑顔で歌っていた。女の人に「君と映画 君と漫画 君とテレビ」の歌詞を歌わせていた。大森靖子を囲む人たちは、いろんな表情を浮かべていた。はにかんだり、ほほえんだり、ひきつったり、無表情だったり、いろんな顔があって、その中心には大森靖子がいた。僕はそのときこの人の音楽なら僕はついていけると思ったのだった。その年の暮れは人生ではじめてリリースイベントに行った。

 

あれから3年が過ぎ、大森靖子も僕も変わった。変わっても、大森靖子の音楽が自分に与える影響の大きさは変わらなかった、種類は変わったけど。3年前は慰めてくれるものだったが、いまは励ましてくれるものだ。

 

今日のライブもあいかわらずよかった。冒頭は弾き語りで3,4曲、新曲を2,3曲(曲の切れ目がわからないのだ)と時雨のカバー、そして「SHINPIN」から「サイレントマジョリティー」そして「マジックミラー」が弾き語られるとバンドメンバーがステージに出てきた。「draw(A)drow」本当にかっこいい。めちゃくちゃ盛り上がるし。TKさんありがとうございます。

「今日のライブはこのツアーTを着てこの靴にしよう、とかそういう小さな選択を一生懸命してライブに来てくれてありがとうございます。まあここから靴は見えないけど(笑)。でも、そういう小さな選択のひとつひとつが出会いにつながったりします」みたいなことを言っていた。大森さんの言葉は本当にいつでも真実だ。小さな、自分以外の人にはわからない無数の選択が、いまの自分につながる。大森さんは、自分が選んだ以外の部分で自分が形作られるのが気持ちわるいという。遺伝とか幼少期の経験とか親の影響とか、そういうのがうっとうしい。僕はそこに共感するわけじゃないけど(僕は母親の強い影響でできているいまの自分がみっともないけど愛おしく思える)、でも大森さんの思いは理解できるつもりだ。

自分の嗜好や選択だけで自分ができていけばいい、心からそう思える人はかっこいい。自分の人生を誰にも預けない、自分の意志だけで歩んでいくんだ。そういう風に思える人には憧れてしまうな。

唯一好きな人のことを思って書いた曲「ミッドナイト清純異性交遊」から、「流星ヘブン」、「M」、「君に届くな」、「絶対彼女」ときて「音楽を捨てよ、そして音楽へ」でフィニッシュ。「流星ヘブン」から「君に届くな」までの流れが好きすぎる。「君に届くな」でマイクスタンドを水平にしてそこにもたれかかる大森さんがかっこよかったです。あと、「音楽を」でサクライケンタが前方に出れるように、ピエール中野がよく見えるように椅子をどけた大森さんの配慮にじんときた。椅子にだらしなく腰かけ「ピエール中野!」と紹介するとこめちゃかっこいい。「絶対彼女」で1番終わって間奏でマイクから離れ、2番始まるとこで慌ててマイクスタンドに戻る大森さんがキュートでした。

 

長い転換が終わり、「TK fromの凛として時雨」。バイオリン、ドラマ、キーボード、ベース、ギターボーカルの編成。バイオリンの音がTKの歌声に近くてどっちか分からなくなるような場面があった。はじめてライブで見たし、曲もぜんぜん知らないのだが、あのギタープレイは圧巻だった。なぜか「多動」という言葉がずっと頭に浮かんでいた。あんなにテクニカルで品があるのに童心を感じるのは、純粋性に富んでるからかな。「ありきたりな言葉と答えじゃ繋がれないよ」という歌詞に凄みがあった。純粋じゃなきゃ、あの音楽はできないと思う。

 

1時間かけて帰路。妻は寝ていた。寂しい思いをさせてすまないと思う。最近なかなか同じ時間に就寝できなくて寂しい。

Iさんに手直ししてもらった文章を仕上げて、記事に載せる写真を選んで加工してたらいつのまにか2時半。送信するとすぐに返信がきた。彼はもう70歳をすぎるというのに、僕の数十倍バイタリティに溢れている。僕がオフィスを出た後は、ランニングに出かけると言っていた。体力がすごい。

 

ベッドに入りブログを書いてたらもう4時過ぎ。僕の体力は少ないので、明日にひびかないか、心配だ。