ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

5時の鐘

パンツは洗いそびれてしまったから、水着を履いて寝た。半袖のTシャツに水着、羽毛の布団に包まったまま、テーブルに置きっぱなしのコップに入った麦茶を飲む。マクドナルドでもらった背の高いコカコーラのコップ。暗い部屋でベッドに溺れる。天気がわからない。

 

いつからか、目が覚めても尿意を感じなくなった。小便が我慢できなくなってベッドを離れる、なんてことも滅多にない。目が覚めてもずっとだらだらと、何時間も横たわっている。

 

ベッドの位置を変えようと思う。北枕になってしまうけれど、窓際にあったほうがずっとマシだろう。外に近い方がマシだろう。北枕は縁起が悪いなんて聞くけれど、どうだっていい。気分を変えるのが先決だ。

 

いい加減トイレに行く。便座に腰かけツイッターを見ながらクソした。肛門と指先にしか意識が向かなかったせいで、水を流した後、自分が小便を出したかどうか思い出せない。

 

トイレから出て、目の前にある流しで手を洗い、マグカップに入った最後のゆで卵を壁に何度か叩きつける。蛇口からお湯を出し、卵に水流を当てながら殻を剥く。こないだ「水に当てながら剥くと剥けやすいよ」と教えられたから、それ以来そのようにしている。「働いた方がいいよ」と言われても働かないのに、こんなことばかり、素直に聞いている。

 

賞味期限から1週間経った5つの卵は、昨日ハードボイルドにしてもらった。死んだ母から送られてきた小包のなかに入っていた、石垣島の塩をかけて、最後の1個を食べながら、ベッドに腰掛ける。食べ終わるころにはすっかり足先も二の腕も冷えてしまった。そしてまた布団を被る。外はもう暗くなってしまった。これから洗濯機を回し、その間にベッドを移動させたい。ベッドを動かすためには、物置台とかした勉強机を先に移動させなくてはならない。きっと埃が舞う、これ以上鼻炎がひどくなるとたまらないので、マスクをしながら作業するだろう。マスクが跳ね返すおれの口臭はきっと卵の臭いが混ざっていて、いつも以上に臭うはずだ。女のおっぱいは独特の臭いがすると思っていたが、マスクをするようになってわかった、あれは俺の臭いだ。

そんなことを考えていたら、またベッドから出るのが億劫になる。寒いから、椅子にかかった真っ白のジャージでも羽織ろう。高校入学前、サッカー部に入ったら使おうと思って、買ってもらった真っ白のジャージは、今も変わることなく真っ白だ。俺はサッカー部に入らなかったから。

逃げて逃げて行き着いた先がここなら、もうどん詰まりだろう。

 

5時の鐘が鳴る、

「カラスといっしょに帰りましょう」

「遊びを続けよう 5時の鐘がなっても 終わらない今日の日を重ねて 滲む世界を抱きしめた 手を叩いて見るものすべてを喜んだ」