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ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

<ハンドメイド下北沢>にて 〜大森靖子を「下北沢にて'16」

下北沢駅近辺のライブハウス各所で同時多発的にライブが行われるサーキットイベント「下北沢にて'16」にて、大森靖子のライブを見た。個人的には「大森靖子生誕 大コピバン祭2016」以来の下北沢GARDEN。

 

GARDENにおもむく前、Lagunaでクリトリック・リスを見た。こないだの新宿ロフト40周年記念イベント「大生うどん食堂」(in川崎クラブチッタ)ではじめて見て気に入ってしまったんだけど、今日は満員でも100人入るかどうかの箱だったから小太りの汗だくおじさんは、俺の目と鼻の先で叫んでいた。その汗汁が俺のパーカーに飛び散ってくるのは、楽しかったけれど、それなりに焦ってしまった。

大森靖子の時間には間に合わせるから!」と言いながらのパフォーマンスだったけど、ラスト前に出てしまった、すみません。20代女の子たちに股間触らせる47歳スギムさん、めちゃくちゃロックでかっこよかったです。

 

入場規制にビビって早めに着いたこともあって、GARDENではステージ近くに陣取れた。


お笑いコンビ・こじらせハスキーのド下ネタコントが終わると、ピンクのワンピースをまとった大森さんが入ってきて、「Tokyo Black Hole」から弾き語りが始まる。向かって右側のスピーカーに比較的近い位置に立っていたこともあり、最初の方は音がダイレクトに鼓膜に触れてしまい、俺は耳が強くないので少々しんどかった。大森さんの声が鼓膜に触れて腕に鳥肌が立つ感じは嫌いじゃないのだけれど、いちおう右耳を軽く押さえながら聞いた。大森さん自身も気になったのかスタッフに向かって手のひらを下に下げて見せていたので、そのうち耳はラクになった。


「さっちゃんのセクシーカレー」、「ハンドメイドホーム」とつづく。この2曲はマイフェイバリットなので、つづけて歌われるとたまらない。この日の「ハンドメイドホーム」はいつもより丁寧で、ラストの激しいストロークも抑えめだった気がした。
この曲の後のMCで、「下北沢にて」というイベントへの感謝と思い出を語っていた。2011年第2回「下北沢にて」で、はじめてこのイベントに出た大森さんのステージは、先述のLaguna。関係者やオタク20人くらいの前で演奏したと言う、あれから5年、「下北沢にて」というイベント自体は7回目にしてようやくチケット完売だと言って拍手を促す大森さん。

 

続けることがほんとに大事なんですよね。
金田くん(THEラブ人間・ボーカル、「下北沢にて」主催者)は私が売れないころからブッキングしてくれてて。でも、最近(私)売れつつあるじゃないですか?(笑)
そうすると「どうせ声かけてもイベント出てくれないだろうなあ」って思われるんですよ。でも金田くんは声かけてくれる。売れないときも、売れてからもいっしょに仕事してくれる。
だから、もしこれから私が落ちぶれてもきっとイベント呼んでくれるんですよね。私はそういう人を大事にしていきたい。いっしょに仕事したい。だから、みんなも売れないアーティストに今のうちに媚び売っといた方がいいですよ。
(以上、意味要約、正確な記述じゃないです)

 

そんなことを話していた。「ハンドメイドホーム」の意味を補強するMC。大森さんの感謝の気持ちが、この日の「ハンドメイドホーム」には色濃く現れていた。毎日が手作りだよね。

 

「ミッドナイト清純異性交遊」の後の「呪いは水色」の照明がよかった。
GARDENの照明は積極的に客席を照らしていて、観客の表情を確かめながら歌う大森さんのスタイルに寄り添った演出だったのだけれど、「呪いは水色」のときは、青色や黄色っぽい明りを使い分けて徐々に大森さんを照らし出していくのは、この曲調にとてもよく合っていた。

 

「絶対彼女」のイントロ、つま弾かれるギターの音色を聴いて、大森さんはギターが上手いのだなあ、と改めて思う。リズムが正確で、一音一音が粒立っていて素敵だった。女子/おっさんに分かれて歌う恒例の「絶対女の子がいいな」シークエンスでは、最前にいた「ハゲ」にピンクのマイクが手渡され、ソロ歌唱。そしてその後ろに立つもうふたりの「ハゲ」によるデュエットが行われておかしかった。歌終わり、大森さんは自分の髪の毛を3本抜いて3人にあげていた。

 

「ハゲ」のリクエストで(便宜上連呼してしまいすみません!)「あまい」が歌われ、そのまま「SHINPIN」につながる。このごろ「SHINPIN」弾き語りが毎度のように聴けて嬉しい。ファンクラブ限定動画で秋田、長崎、広島公演の同曲を聞いたけれど、ツアーを通して完全にものにしたことがうかがえた。大森さんの間の取り方・使い方はサスペンスでエキサイティングだ(先日のツアーファイナル「音楽を捨てよ、そして音楽へ」の静寂を思い出そう)。

 

「オリオン座」は多分はじめてギター弾き語りで聴けた。これはパーフェクトなマスターピース。なんのてらいもない純粋なメロディーに乗った人生賛歌。俺はいつになったらこの曲を冷静に聴けるようになるのだろう。

 

「ラスト」、と言って歌いはじめる「少女漫画少年漫画」。このところのライブを聴いてると、この歌は「魔法は解けない 呪いは効かない」に生まれ変わったようだ。
マイクの外し方、ギターのアンプ/生音の切替が相変わらず絶妙で、鳥肌が立つ。
遠近を巧みに使い分ける大森さんの演奏は、絵描きとしての才能とも関係があるのかなと思ったり思わなかったり。
エンディングではハミングバードをフィードバック(?)させていてクールだった。

 

人差し指を立てる、泣きのあと1曲、「さようなら」。
ギターを背中に回し、いつも通り声ひとつで歌い上げる。
「下北沢にて 最後の一歩 この部屋にて 泣きのあと1曲」。大森さんの、「下北沢にて」というイベントへの感謝がにじみ出たパフォーマンスだった。

 

今回のライブは久しぶりに大森さんを近くで見れたのだけれど、アイメイクのせいか目の周りがきらきら潤っていて泣いているようにも見えた、まあそんなことはないのだけれど。俺は、大森さんが泣いてることにしたかったらしい。
ナナちゃんに当たる照明が綺麗だった。体を、前に伸ばした右腕を、震わせながら歌う大森さんは、ピンクのワンピースのシルエットも相まって大きく見えた。

 

観客が大勢いたライブハウスから出るのには5分くらいかかった。今日は、最近大森靖子のファンになった人といっしょに見ていたのでサイゼリアデカンタ250ml×2の白ワインを飲みながら感想を言い合い、解散。

 

 

俺はGARDENに戻り浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSを見る。笑っちゃうくらいかっこいい。ギターがめちゃくちゃうまいようには思えないんだけど、彼の鳴らすメロディーと音色はパーフェクトにロックンロール。タンクトップの二の腕は中年のそれだったけれど、それも貫禄になってた。
ベースは中尾憲太郎(元ナンバーガール)。長い髪を振り乱して弦を弾く姿は、はじめて見たけど無骨にセクシーで、俺は濡れた。
ドラムは小林瞳。転換中はふつうに叩いてたのに、『荒野の用心棒』メインテーマに乗ってやってきた彼女は黒いサングラスをかけていて、それがなんだかとてもキュートだった。
聞いたことのない新譜からの曲たちは全部かっこよかったので音源聞きたくなったのだけれど、最後の曲にブランキー「SALINGER」が鳴った瞬間、オーディエンスが最高にボルテージを上げたのを見て、複雑な気持ちになってしまった。まあ俺も嬉しかったけど。俺だって今のベンジーを(昔のベンジーもだけど)ちゃんと見ているわけじゃないのに、複雑な気持ちになるのは勝手すぎるな、と反省しました。

 

GARDENをさっさと出て、平賀さち枝を聴くために再びLagunaへ。おでん香るハコのなかは男性が多かった。
「さいきん人と話していないから」と言って、MC中にお悩み相談を受けたりしていた平賀さんは、女性客はいないんですか?としきりに聞いていた。ベレー帽をかぶった21,2歳の女の子のために歌いたい、と言う。
今日初めて見たからわからないのだけれど、これはおきまりの流れだったのだろうか。少ない女性客のなかにはめちゃくちゃかわいらしい娘もいてよかった。


その音色にわかりやすく弦の手触りが現れるクラシックギターと平賀さんのかわいらしくもクセと芯のある歌声が相まって心地よい時間が流れた。
広瀬香美のカバーもよかったし、少しだけ口ずさんでいた玉置浩二(&井上陽水)「夏の終わりのハーモニー」も素敵だった。
彼女が書き歌う恋にまつわる言葉たちは、ときたまかさぶたを剥がしにかかるので、ちょっぴり痛くて、でもくすぐったさが気持ちよかった。帰りにツタヤでシングルを借りて、iTunesからも数曲見つけたので、聴き込みたいと思う。

 

それにしても、昼にはパンツいっちょ股間にノイズ銀玉をつけたおっさんが所狭しと動き回り叫びまくり飲みまくってた部屋が、夜は黒ワンピースに身を包んだ小柄な女性が小さなクラシックギターとそのやさしい歌声で満たされていたのがおかしかった。そのギャップに触れて改めて、このイベントのバラエティーの豊富さと、クオリティーの高さを知った。2つのライブハウスと4組のアーティスト見ただけなのに偉そうかな。

 

 

いろいろ書いたけれども、やっぱり、いちばんでかいライブハウスでひとり、堂々と、淡々と、しかし真剣勝負の手癖抜きで、歌いきり観客を魅了した大森さんのパフォーマンスが、今日の俺の「下北沢にて」最大のハイライトだった。