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ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

大森靖子生誕 大コピバン祭2016(9.18 下北沢GARDEN)の遅すぎてちょっと長い感想文

きのうは「大森靖子生誕 大コピバン祭」に行った。と書きはじめてからだいぶ経ってしまった……この間、発売延期で心配していた大森さんのニューシングルは、小室哲哉作曲というビッグニュースがあったせいか、もうコピバン祭も遠い過去のように思える、と書いてからもだいぶ経った……。手元にはとっくにそのCDがある。
以下、ライブの感想だけど、余韻覚めやらぬころに書いた文章といまさっき書いたところ(この冒頭は最後に書いている、と書いてから1ヶ月以上経った)の差がめちゃくちゃ激しいので、さっと読み流しただけでも、境界線がわかるかもしれない、あっさりと。

 


18時の開演に10分程度遅れてしまった。
あとでツイッターを見て東京事変を中心としたバンド」の冒頭3曲、「群青日和」「丸の内サディスティック」、「すべりだい」を聴き逃したこと、偶然下北沢GARDEN前を通った(?)というクリトリック・リスのオープニングアクトを見逃したことを知って痛恨の極みだったけれど、ジョニー大倉大臣のふらふらしたボーカルによる「無修正ロマンティック ~延長戦~」のデュエット聞いてほのぼのできたから仕方ない……。原曲は、アンニュイに歌う直枝さんと大森さんの声の絡み合いがセクシーなんだけど、直枝パートをあやふやに歌うかわいいジョニーさんの音程に合わせてコーラスしようとする大森さんという構図が微笑ましかった。最後方から見ていたので、この日の大森さんの姿はあまり見えなかったけれど、猫耳ツインテールだったのは覚えている。
「私の曲のなかでいちばん東京事変っぽい」という「無修正ロマンティック」のあとは、「カプチーノ」。コーヒーがまだ苦すぎる少女はミルクに甘えている。「イーブンな関係に成りたい」と願いながらしかしやっぱり「もし我が儘が過ぎて居ても黙って置いて行ったりしないで」と言ってしまうこの曲が孕む少女性を大森さんのボーカルは的確に捉える。
次は「閃光少女」。大森さんの「あまい」の歌詞「今を生きるなんてもうダサいでしょ なるべくずっと一緒にいようよ」は、「閃光少女」への彼女なりの距離の取り方だと勝手に思っていた。だから、椎名林檎のことは好きだけれど、歌手としてのアイデンティティーをつくるうえで彼女の影響圏から抜け出そうとしたであろう大森さんが歌う「今日いまが確かなら万事快調よ 明日にはまったく覚えていなくたっていいの」は感慨深かった。どんな昨日よりも好調ないまを毎日つづけていくパワーが彼女にはある。
ラスト「罪と罰」椎名林檎節を踏襲しつつの距離の取り方だったけれど、Cメロの「静寂を破るドイツ車と」を消え入りそうな少女のような声にはハッとした。
椎名林檎に少女性(というより幼女性?ってなんだ?)をぶつけてくるアプローチってのが新鮮だった。もちろんかつての彼女の歌詞にはそういった要素が数多盛り込まれていたわけだけど、それはあくまでも女になりきる直前の少女の危うさのようなものだったはずで、大森さんのアプローチは女性という成分がより薄れていて、どちらかと言うと幼女といった趣。それは村田沙耶香「コイビト」で書いたような幼い女の子のなかにも強烈な「女性性」が宿っているというようなものではなく、ファンタジーな、「かわいい」を濃縮抽出したようなボーカルだから、それが退廃的な「罪と罰」にぶつかると、異様な空間が立ち上がる。

 

「かわいい」を濃縮したのち高圧抽出したような歌い方をする大森靖子にかかれば相対性理論を中心としたバンド」はロリ系のたまんねえ萌えコピーになるかと思いきやそうでもなかった。動き少なめで譜面台の前で淡々と歌われる相対性理論が少しぶっきらぼうだったのは、MCで言ってたように本当に緊張していたからなんだろうか。もちろん、ただコピバンするのではなく、一般的なイメージとずらしつつ自分のカラーを出すというのは「コピー」と言いつつの「カバー」だから当然のチャレンジで、だからそのあたり自覚的だったに決まっている。

 

 

前回のコピバン祭でも相対性理論をがっつり歌っていたそうで(おれは聞きに行けなかった)、大森さんが相対性理論を好きなのはファンにとっては周知のことなのかもしれないし、「きすみぃきるみぃ」が相対性理論っぽいとかもあるけれど、それでも大森靖子相対性理論の交錯点はいまいちわからない。

 

 

相対性理論を中心としたバンド」の編成は、ギターはふぇのたすのヤマモトショウ、ベースがShiggy Jr.の森夏彦、そしてドラムは本家本元かつて相対性理論で叩いていた西浦謙助というメンバーで、全員が「かわいい」ボーカルを支えてきた人たちだった。
相対性理論の曲以外にも、合計3時間ほど入ったスタジオ練習中に4人でつくったという「やっときゃよかった」(仮)とナンバタタンの「ガールズ・レテル・トーク」が演奏された。
こないだ小沢健二のライブに行ったときも思ったけれど、一聴しただけの音楽が全然覚えられない。かなしい。


ハロプロを中心としたバンド」が案外この日いちばん安定感のあるバンドだった気がする。とはいえハロプロの曲をほとんど知らなくて、「泡沫サタデーナイト」と、大森さんがつくった吉川友「歯をくいしばれっ!!」、そしてハロプロ関連曲のアレンジを多く手がけている大久保薫が編曲した大森さんの曲「イミテーション・ガール」だけわかった。ただ大久保薫さんがアレンジしてくれた曲やります、と言った瞬間に「少女漫画少年漫画」を期待してしまったのが個人的な失敗だった。「イミテーション・ガール」だって楽しい曲なんだけどさ、でも大森さんのライブで歌う「少女漫画少年漫画」をぜんぜん聞けてないから聞きたかった……。『TOKYO BLACK HOLE』のなかでいちばん好きないちばん泣かされた曲だからなあ。ツアー楽しみ(いよいよこれから7時間後!)。


松浦亜弥の「オシャレ!」が気に入った。

 

ラストは「カオスバンド」(TOKYO BLACK HOLE TOURのバンド編成)ということで、いろんなアーティストの曲をカバーしまくっていた。
この夏のフェスでおなじみとなっていたBUMP OF CHICKEN「天体観測」をはじめて生で聞いたけど、声のコントロールができるかできないかギリギリのところで叫ぶように歌う大森さんが(案外)新鮮だった。

2曲目はSPPED「Body & Soul」。この曲もライブで何度かカバーされている。

 

SPEEDとか、安室奈美恵とか、浜崎あゆみとか、歌う人はみんな、かわいい人ばっかりだな、ってテレビの青い光浴びながら思い知っていたんだ。歌うのが好き。でも、きっと私が歌手になるのは無理だ。東京出身でも沖縄出身でもないし、かわいくないし。歌うのにお金払うっていうのは意味不明だけれど、もう、私はカラオケでいい。

 大森靖子最果タヒ『かげがえのないマグマ 大森靖子激白』 P.23


 「Body & Soul」の演奏後、大森さんは「学生のとき男の子がギター持って、ゴイステとかハイスタとかコピバンでやってて、私は『いいなあ~』って超指くわえて見てて。女だし入れてもらえないなあとか思ってて。だからここまでコピバンに執着してる。メジャーデビューしてコピバンやり続けている人いないよ」と笑って言った。


3曲目はJUDY AND MARY「BLUE TEARS」。「女だし入れてもらえないなあ」と思っていた大森さんが、ジュディマリを歌うつながりにグッとくる。「銀杏→YUKI」で好きになりファンクラブにまで入っていた大森さんのこのツイートが最高。

 「BLUE TEARS」は伸びやかなボーカルが気持ちよかった。この曲を明るく狂わせたのが、「子供じゃないもん17」のような気がした。


4曲目はMINMI「The Perfect Vision」。

意外な選曲に思える。高校生のころの大森さんはカラオケにフリータイム(10時間)で入って、この曲を最初から最後まで延々歌いつづけていたという。「この曲歌ったらそりゃあ歌うまくなるよなあ」と思いながら聞いてくださいと言っていたが、大森さんはこの息継ぐ暇のない曲をMINMIよりも歌い上げていた。ロックンロールだった。

 

5曲目は宇多田ヒカル「Keep Tryin'」。メイド、女子高生、スチュワーデス、婦警……と宇多田のいろんなコスプレを見れるこのPV楽しくて泣ける。むかしの大森さんのブログに宇多田ヒカル歌いたくてカラオケ屋何軒も周ったけどどこも空いてなかったというのがあった。そのあと結局ゲームセンターでコインゲームしたら延々とメダルが出てきて最悪みたいな1日の記録。あのころの歌いたい気持ちはいま発散解消されているんだろうな(http://blog.livedoor.jp/omorimorimori/archives/52152710.html)。
宇多田の歌う「Keep Tryin'」は歌詞の割にカラッと歌われている気がするけれど、大森さんはもっとねちっこく歌っていてこの曲の隠し持つ恐さが前面に引き出されていた。


ラストはASIAN KUNG-FU GENERATION(予測変換便利)「リライト」ナナちゃんの曲(https://twitter.com/momochanbangal/status/736925026134286337)。サビのシャウトのたびに大森さんに掴まれたナナちゃんはフロアへ前のめっていた。

 

アンコ―ルは大森靖子の4曲、「ミッドナイト清純異性交遊」「マジックミラー」「TOKYO BLACK HOLE」、そして「音楽を捨てよ、そして音楽」へ。
アンコールの会場はピンクのサイリウムに包まれていて、ファンからのプレゼントや、ケーキも出てきた。

 

 

 

ピンクの光に促されて「ミッドナイト清純異性交遊」からアンコールははじまる。この日これまで歌われてきた数々の名曲が、大森さんの作る曲につながっているんだと思いながら聞く「ミッドナイト」はいつも以上に感傷的に耳に入ってくる。バンドの音も大森さんの歌いっぷりもふだんより柔らかく感じられる。
「マジックミラー」、きらきらした音色、パワフルなドラム、ハネるベース、切実な声、各パートがバラバラのことをしているように感じるのに、それらがまとまってひとつの曲になる。
そのままシームレスに「TOKYO BLACK HOLE」へとなだれこむ。やっぱり「街灯 はたらくおっさんで ぼくの世界がキラキラ 人が生きてるって ほら ちゃんと綺麗だったよね」の歌詞に泣けてくる。最後の「見晴らしの良い地獄」という言葉がギザギザしていて痛い。
拍手が鳴り止む前に「音楽は魔法ではない」のつぶやきが繰り返されはじめる。「音楽を捨てよ、そして音楽へ」だ。「脱法ハーブ 握手会 風営法 放射能」の言葉の連なりだけで涙腺が緩まされ、「きみ話してたこともっと大事だった気がするんだ」の語りかけで泣いてしまう。いつもそうだ。俺はちっともそんな風に生きられてないな、と毎回おもう。「おもしろいこと ほんとうのこと 愛してるひと ふつうのこと なかったことにされちゃうよ」と肩を揺さぶられる。この曲がいまいちばんロックンロールな曲だ。いつまでもそう思わせていてほしい。ラストに向かってどんどん盛り上がっていき爆発する演奏込みで好き。


いつものライブでは「音楽を捨てよ、そして音楽へ」が鳴り終わるころ、大森さんはステージを去っているのだけれど、この日は違った。
最後に「たくさん音楽をやってくれる人と、いっしょに楽しんでくれるみんなのおかげでとっても楽しい誕生日でした、ありがとうございました!」と言ってくれた。


こちらこそ生まれてきてくれてありがとうございます、だ。できれば、楽しそうに歌う大森さんを見たいけれど、大森さんがいま歌いたいこと、歌えること、歌わなくてはならないと思っていること、歌わずにはいられないこと、うっかり歌ってしまったこと、そのどれでもいいから、俺は聞きたい。