ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

財布無くす

また財布を無くした。こないだ楽しかったディズニーランドのビッグサンダーマウンテンで無くしてから半年、また無くした。

よくモノを無くす、財布、ビニール傘、鍵、本、マフラー……。大切な日にもらったモノをまた別の大切な日に無くし、ハタチも過ぎたのに泣いたことだってあるというのに、無くし癖は治らない。なぜならいつだってそれらは手元に戻ってくるから。東京はやさしい。

 

待ち合わせの駅に着き改札を出ようとして、車両に財布を忘れたことに気づく。今シーズンはじめてジャンパーを着た日だった。その右わき腹についているポケットから、座ったときに財布がこぼれ落ちたんだろうとすぐ気づく。駅員に伝え財布の行方を調べてもらう。待人に財布を無くした旨を連絡する。けっきょく財布は終点で見つかり留め置かれることになり、その日は待人にお金を貸してもらい、食べ、遊び、帰った。

 

翌日、財布を取りに行った。財布を取り戻すまえに、昨日借りた金で家系ラーメンを食べた。女の金で食べる家系ラーメンはいつもより控えめな味だったが半ライスとともにおいしく完食。いつもよりありがたく麺を噛み締めた。家系ラーメンの麺は太く、どれくらい噛んだら飲み込んでもいいのかといつも悩んでいたが、この日は麺としてのアイデンティティーを失うことなく、かといって消化にたいそう悪そうな形状を止めることもなく、喉を下っていったように思う。家系ラーメンとおいしく付き合うには、女の金で食うに限るのかもしれない。

 

財布を無くしても、女はやさしかった。映画の切符はもう手元にあったのに予定変更して、終点まで財布取りに行こうか?と言った。映画代もったいないから、明日取りに行くよ、悪いけどきょうはお金貸してください、と俺は言った。

 

男は無くしてからはじめて自分の手中にあったモノのかけがえのなさに気づく、とよく聞くが、俺は本当の意味で何かを失ったことがまだない。財布はいつも戻ってくる。