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ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

六本木-渋谷(10.30のハロウィンモーニング)

オールナイトで映画(『ハッピーアワー』)を観終わり、まだ暗い朝の道を、六本木から渋谷まで歩く。電車賃を少しだけ浮かせることと、ハロウィンに盛り上がる渋谷を見物することが目的だ。映画の残像を頭のなかでぐるぐるさせながら早足で歩く。

西麻布交差点では仮装した若者たちが、いちゃついたりうなだれたり吐いたりカップラーメンを啜ったりしていた。11度という気温にもかかわらず四肢をあらわにしている女の子たちを見ていると股間よりも鳥肌が立つ。

交差点を過ぎると人はまばらになった。六本木通りをまっすぐ行けばいいものを、高樹町交差点で地下道に潜って向かい側の歩道に渡り、骨董通りに迂回してしまうのはクセだ。クセではあるけれども、骨董通りに用があったことなど一度しかない。あれはへんてこりんな会食だった。ブルーノートとか岡本太郎記念館とか行ってみたいと思いつつ、行けてない。

南青山五丁目の交差点で左に曲がり246号を西進すると左手に青山学院大学、右手に国連大学を見ることになる。門の閉じた青学の並木道の左右にはたくさんのテントが畳まれている、学園祭期間中らしい。ハロウィンと学祭のバッティングはえらく楽しそうだ、けれど、学生時代の俺は間違いなくキャンパスには行かない。それは間違いなのだけれど。国連大学前にもテントがたくさん張ってある。毎週行われるファーマーズマーケットのためだ。これも、一度も行ったことはない。

車が通らないのをいいことに、歩道橋は渡らずに、246を大股で渡る。宮益坂まで来ると渋谷の谷底から上がってきたパーティーピープルがちらほら。松屋の座席は仮装姿でそこそこ賑わっているようだ。

宮益坂下が明治通りとぶつかる交差点を直進してJRの高架下を抜けると、始発もとっくに出ているというのに、渋谷スクランブル交差点は平日の出勤時間と同じくらいの人出だった。センター街(バスケットボールストリート)には、ほんものの警察官に囲まれているにせものの警察官、ピカチュウに抱きつくハーレイクイン、マリオ、一松withエスパーニャンコ、ナース、フランケンシュタイン、ジャンプマンガのなんらかのキャラクター、裾の汚れたシンデレラ、なんらかのマッチョなどなどいろいろいたけれど(から)、あまり覚えてない。仲間と仮装を揃えているのがけっこう目立ち、コスプレのユニフォーム化はなんとなく残念だった。黒のショルダーバッグに擦られて腰のところが毛羽立ってしまった紺色パーカーに濃い色のジーンズ、紺色のデッキシューズという夜に溶け込みそうな格好をした俺を見る者はひとりもいない。夜中に雨を降らした雲はまだ消えず、渋谷は薄暗い。音楽をかけて踊ってる集団や、フリースタイルラップをしてる連中、記念撮影にちゃちゃいれる男、退屈そうな疲れた顔の女の子たち、下心があるのに勇気のない仮装すら冴えない男の子たち、田舎から改造ワンボックスで出てきたヤカラたち、外国人。いろいろな人がいたけれど、みんな若かった。楽しそうなやつもつまらなそうにしてるやつもいたけれど、俺の見ている渋谷は、故郷にいたときになんとなく憧れていた渋谷の実現だった。でも、せっかく故郷から出てきたのに俺は、渋谷の一員にはまだなれていない。

109の地下、ホームレスの寝床に横たわっている浮浪者は2人だけだった。地下鉄に乗ると、向かい側の席ではサングラスをかけたいかついピカチュウがひとりうなだれていた。おたくのコスプレをしているようなほんもののおたくが、ミニスカポリスたちに席を譲っていた。