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ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

涼しい部屋

ずーっとエアコンつけている。エアコンをつける代わりに、部屋の灯りはなるべくつけないようにしている。いままだ日は落ちていない時間だけれど、さっきぶあつい雲がやってきて、周辺はうすぐらくなって、この部屋はまっくらになった。PCが眩しい。空が光って雷が鳴る。こわい。また雨が降ってきた。こないだ寒い地方に行ったときに着た裏起毛のパーカーが雨に打たれているけれど、あれは温泉地の硫黄にやられてすっかり臭くなっているから、雨に濡らすくらいがちょどういいかな、と思ってなんとなくそのままにしている。空の点滅間隔が短くなってきた。何がちょうどいいんだろう。


ずーっとエアコンつけている。室外機から伸びるパイプからは水が出続けていて、パイプから溝、排水口へと至る道は、F1マシンがコースにつけるタイヤ痕のようにヘドロによってベストルートが可視化されている。道中にはいつ飲んだのかわからない青島ビールの瓶が転がっていて、なぜか俺はそれを片付けない。


隣の部屋のベランダとこちらのそれはつながっていて、非常時のためにかんたんに破れるようになっているらしい壁で遮られてはいるものの、下水道にいたる溝は共有している。先日気づいたのだけれど、隣人はその溝に何か布を詰めていた。もしかしたら俺の部屋の室外機が延々と排出する水が、隣に流れて迷惑をかけていたのかもしれない。わりにかわいらしい花柄の、しかし本来の用途はわからない布が、溝で濡れている。

 

ずーっとエアコンつけている。父親の賃金が冷風となって俺を撫ぜつづける。母はむかし「節約とかいいから、熱中症にならないようにエアコンつけなさい」と俺に言ったくせに、自分はクソ暑い部屋で倒れてそのまま逝った。そのとき俺は、きょうと同じように涼しい部屋で、寝ていた。朝から夕方まで寝ていた。