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ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

夢見る

たまに見る、刑務所に入れられる夢。毎回、どんな過ちを犯してぶちこまれてるのかはわからないのだけれど、圧倒的な罪の感覚と、これから何年も外に出られないのだという恐怖はやけにリアルで、夢のなかの俺はいつも、すべてをパーフェクトに諦めている。


今夜は、夕方に行った散髪の疲れから明かりをつけたまま眠ってしまい、夢は、入獄前の身体検査の光景を、まぶたの裏側に映していた。
大勢の半裸な男たちが待機する部屋に俺はいる。ぼーっと辺りを見回すと、遠く離れたテーブル席に、中学のころの同級生が何人かいるのが目に入り、愕然とする。
俺の首を絞め、サッカーのゴールポストに張り付けにしながら顔面を殴打した男や、しゃがんだ俺の顔面を思いっきり蹴りあげてきた男、そういうやつら。1年半もあいつらと同じ場所にいたら気が狂ってしまう、と半べそかいて、うつむいた。
しかし、ふと彼女のことを思い出して、「アイツが月に1回面会に来てくれるなら、あるいはおつとめ頑張れるかもしれない」と思い至り勇気づけられる、というところで目が覚めた。



ひどい寝汗を拭いながら、彼女のことを想った。勝手に想っているだけだった。考えれば考えるほど、思い出せば思い出すほどに、彼女は他の男性たちとも親しくしていることに気づき、それらの関係はほとんどすべて色恋抜きだったことを確認するだけだ。
まあ、俺だって、誰よりも彼女のことを好きとか、そういう風に想っているわけじゃない。


月に1回面会に来てくれる人を夢見るより、毎日お勤めから帰ったら家にいる女性を夢見たい。もっと言えば、毎日お勤めから帰ってくる女性を出迎えたい……。
夢見ることくらいは、自由だったはずなのに。

 



蛇足になるけれど、さいきん、彼女の記録した言葉を振り返っていたら、彼女の言葉に対する誠実さに改めて気づかされ、ほとほとイヤんなった。
頑固ではなく、信念による一貫性。
理論や論理や抽象からではなく、実感や生理や体験からスタートした一貫性。
理想を守りながら、現実と格闘できるひと。


彼女にとって自身や他者が何の気なしに放ったつぶやきや冗談と、自身や他者がうんうん唸って書き下し推敲して提出した文章は、同じように扱われるべきもの、というより彼女はむしろ前者を優先していることのほうが多いくらいで、いつかの俺はその感性を「窮屈」と評した。その実感はいまだに変わりないのだけれど、それを窮屈と思ってしまう自分は嫌いだ。


この文章のすわりがいつも以上に悪いのは、良いこと。