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ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

女友達

女友達を映画に誘った。彼女の仕事に近い内容の映画だったからだ、というのは口実で、僕はつねに彼女に会いたいと思っている。


どうせだったらトークショーのある日に誘おうとずっと前から考えていたのに、けっきょく上映時刻の4時間くらい前にメールをした。上映が始まるまで返信はなく、僕はけっきょくひとりで映画を見て、トークショーを聞き、劇場を後にした。


帰路、スマートフォンの電源をつけると、返信が来ていた。きょうは仕事があってごめんねありがとう、そう書いてあった。土曜日なのに忙しいんだな、と返信して電車に乗り、家に帰ってパンフレットを開いてベッドに横になりながら見るともなくページをめくっていると、着信音が鳴った。彼女からだ。僕はテレビの音量を上げて電話を取った。


どうしたの? と聞くと彼女は「まだ近くにいるなら夕飯いっしょに食べない? あと少しで仕事片付くから、40分後に◯◯の前でどう?」と言った。ふたつ返事だった。帰り道にあるコンビニでおにぎりとチキンを買って食べていたから、急いで歯磨きをして、ふたたび電車に乗って映画館のある、彼女の働くオフィスのある街へと戻った。



その日の食事は散々で、まったく良いところがなかったのだけれど、まあ会えただけ良かったというもの。忙しくて、僕と違ってたくさんの友人がいて、いつも時間に追われている彼女と食事ができるなんて光栄だ。


むかしの僕だったら、「実は1回家に帰ったんだけどまた出てきたんだよ」と口を滑らせるところだけれど、そんなことは言わない。かつての僕は自分がお前に会うためにどれだけの労力をかけたのかということを伝え、それすなわちあなたへの愛情の深さゆえ、と誰かれ構わず恩着せていた。
でもそんなことを言えば、彼女は単刀直入「なんでそんなこと言うの、わざわざごめんね」って返事することが分かっているから、僕は言わない。
僕は純粋に彼女に会いたくて家を飛び出してこの街に戻ったのだ。

 

彼女に出会ったころの僕は、じぶんに自信があって、彼女の至らないところもすばらしいところも等分に知っていて、だから彼女と友人でいられたのだけれど、いつからか、彼女は非の打ち所のない人間に僕には思われて、ただただ尊敬してしまい、しっぽを振って駆け寄ってしまうようになった。たぶん彼女にとって、いまの僕らの関係のあり方は窮屈だろう。あるいは何にも考えていない可能性はあるが。「なんでコイツはひとりあたふたしているんだろう」なんて思われているだけかもしれないのだが。

 

先にあげたリンク先の記事では、僕が社会から離れてしまったがゆえに、彼女とフィーリングが合わなくなったのだ、というような書き方をしていたけれど、まあそれは一面では正しいのだけれど、あくまでも一面に過ぎない。
僕はずっと彼女のことが好きなのかどうかわからなくて、じぶんのスタンスを定められていないのだった。だから言動が定まらず、しどろもどろになってしまう。お札の向きをバラバラにしてカルトンに置いたのも、ちまちまデザートを食ったのも、食事中にミンティアを頬張ったのも、彼女のことが気になっているじぶんと、彼女との友人関係を大切にしたい今のこの時間を楽しみたいという気持ちのあいだで揺れているがゆえの滅裂な行動でもあったわけです。
ただでさえ社会性を失った人間が、恋愛感情なのか友情なのかわからないよー、なんて高尚な悩みに頭を突っこんでしまったがゆえに、あんなことになった。



ハタチの僕だったらじぶんひとりで悩んでるのかったるい! とすぐに気持ちを相手に打ち明けていただろうに、変なとこだけ大人になっちまったようで。


しかし、こんなことに悩んでいるのは、じぶんが意を決して告白したところで、立派な彼女のパートナーになることは不可能だと気づいているからなんだろう。
友情か恋愛感情かわからないなんて言って、問題はそこじゃないだろう。




きょう、彼女にとても会いたかったけど、せめて連絡を取りたかったけれど、ダメだった。何を話せばいいのかわからなかった。