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ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

顔こそがスペクタクル 『スポットライト 世紀のスクープ』ネタバレも少しありつつ雑感

ストーリーについてのネタバレというほどのものは書いてないとおもうけど、そういうのが絶対に嫌だという人は読まないでください。



アカデミー作品賞、脚本賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』は、とにかく登場人物の顔、表情がいい。



マーク・ラファロの純粋無垢で時に感情的になる顔や『パニック・フライト』や『誰よりも狙われた男』のように事件に翻弄されるのではなく強い眼差しで事件を見つめるレイチェル・マクアダムスの顔、すべてを悟ったときのマイケル・キートンの横顔たちがことごとく映し出される。この映画は、役者の顔のクローズアップと切り返しで見せる。
子供の頃に神父らによる性的虐待を受けた男たちもどこか不安定な顔の役者ばかり揃えていて良い(そういえば劇中では男女関わらず犯されたって言われてたのに、証言者は男しか出てこない)。
ある日本人映画監督が、俺は宇宙船とか街とかでかいものより、人間の顔みたいにスクリーンより小さいものを撮ってでかく見せたい、って言ってるのを聞いたことがあるんだけど、『スポットライト』のクローズアップでその言葉を思い出した。だから、この映画は映画館で観たほうが感動する。映画のスペクタクルはアクションだけじゃない、むしろ、顔こそがスペクタクルだ。


その一方で、ひたすら走ってタクシー捕まえるマーク・ラファロや(がんばってるのになぜか笑える、劇場内も失笑に溢れた)、クリスマスツリーを背景にして落胆するカトリック信者のおばあさんのバストショットなどもことごとく的確。別々の取材を行なうチームの並行モンタージュは非常に手際よくて、『マネーショート 華麗なる逆転』の落ち着きの無さに辟易とした後だったのも相まってすごく好感が持てる。


この映画を見る前に得ていた事前情報は予告編で、見る前は記者たちが教会の妨害工作に翻弄されたり彼らの家族に危険が及んだりするような話を想像してたけど全然違っていて、教会はもっとしたたかなシステムだし(だから教会の人物はほとんど何も語らない、敵は教会というシステム!)、何よりも真実がもっと早く明らかにならなかったのは誰のせいなのか、ということが本作の大きなテーマになっていて深みがある。すべてが終わった後でマーク・ラファロが弁護士事務所で目にするふたりの子供の存在がとても重い。


ボストンのカトリック教会の神父たちが、長年に渡って行ってきた児童への性的虐待の組織的な隠蔽を地元の新聞社が暴くというのが本作の話の筋で、登場人物は少なくないし簡単な話ではないのだけれど、観客が飽きずに見ていられるのは、役者たちの表情とそれを引き出した演出と顔を的確に捉えるカメラ、そして編集のテンポの良さゆえ。アカデミー作品賞は『レヴェナント』だとか『マッドマックス』だとか言いたい向きはあるだろうけど、教会という強大な「権力」と戦うマスコミの画的には地味にならざるをえないストーリーをウェルメイドに描いた本作は賞にふさわしかったんだろうと思う(『レヴェナント』はまだ見ていないけど…。あと『ブリッジ・オブ・スパイ』は確かにすごくいい映画なんだけど、やっぱりどこかスピルバーグの歪さがあって、アカデミー賞に置かれたら居心地悪そう)。


実話をもとにした映画って、ラストで本編の後日談を文字で語っちゃうことが多くて、うーん……ってなることが多いんだけど、この映画はそこがまた見どころでもあって、最後までしっかり作られた、いい映画でした。

 


いろいろ言ったけど個人的には黒のノースリーブを着たレイチェル・マクアダムスの太くて柔らかそうな二の腕と、彼女が図書館に座っているシーンがもっともグッときた。アメリカの図書館の机に置いてある緑色のランプシェードの照明、バンカーズランプが俺はとても好きなんだけど、この映画の照明は緑色はそのままにいつも見るのとは違っていて目を引いた。
レイチェル・マクアダムス37歳らしいが、ぜひヒモにしていただきたい。

 

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