ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

大根の天啓

ここ2週間くらい、まめに自炊するようになった。
自炊を続けるコツは、自炊を楽しむことだと思う、と言うと身もふたもないんだけど、「いや、楽しめないからつらいんじゃん」と言われるだろうけど、3週間前の俺にこんなこと言ったら同じく「自炊のどこが楽しいんだよ」と怒られそうだけど、でも、これが事実だ。
自炊を続けるコツが自炊を楽しむことだとすると、自炊を楽しむコツは自炊のどこかに自分が楽しめる要素を見出すってことで、俺の場合は野菜を切るのが好きだった。そのことにこないだ偶然気づかせてもらった。


いまに思えば、むかしからリンゴを切るのは好きだった。別に最後まで途切れること無く皮をむけるとかではなくって、なんとなくりんご一玉を半分にして4分の1にして芯をとって皮を向いて8分の1にするという流れ作業、でも切り終わったときに皿の上に残ってるりんごの数は6個というセルフつまみ食いの楽しさ、なんかそういうのがむかしから好きだった。
あと、母に包丁の使い方を習ったときに扱ったのがリンゴだったというのも、リンゴを切るのが好きな理由のひとつかもしれない。母がリンゴや梨を買ってきたら「俺が切る」と言ったものだった(性質的には梨よりリンゴの方が圧倒的に楽しく切れる。食べるときに嬉しいシャリシャリ感は、切るときには若干の反抗につながっている気がするんだけど、梨を最後に切ったのはだいぶ昔のことなので記憶違いかしら)。実家でリンゴと梨以外のものを切ったことない。


話は戻って、なんで自分が野菜を切るのが好きだと気づいたのかということだけど、それは天啓のようなものだった。いつものように値引きされた弁当を買いに夜のスーパーに行ったとき、視線の端に大根が映った、何の変哲もない白い大根、それを思わず手に取ってしまったのだった。1本まるごとはひとりで食事する者にとっては多いけどそんなことは関係なくそれを手に取ってかごに入れた。使いみちはそのときまったく決まってなかったんだけど、その後は魚売り場で安くなっていたイワシを見て、煮付けとやらをやってみようと思った。スマホで調べたら酒とみりんがあれば煮付けはできるらしいのでそれらを買った。


で、家に帰ってさっそく大根を切った。とりあえず3等分にして輪切りといちょう切りと短冊切りにした。大根は皮が硬くて簡単にむけるから爽快だ。1本あればいろんな切り方ができるのもいい。煮付けにはどの切り方があってるのかわからないからとりあえず輪切りといちょう切りしたやつを入れて、残りはすりおろして納豆とかと食べた。短冊切りは翌日味噌汁に入れた。
あと、本当はイワシのつみれとかやろうと思ってたんだけど、いきなり背伸びしすぎなんでやめた。


しかし、今回大根が「俺を切ってくれ」と訴えかけてくれたおかげでわかったんだけど、みりんと酒としょうゆと水の混ざった液体に魚と大根入れただけで、あんなにやさしい味のうまい料理ができるんですね。こんなに簡単だと知っていればもっと前から自炊したのにと思った俺はひとり暮らし7年目。


その後も味噌汁やったり久しぶりにカレーをつくったり、3日くらい前は鱈の煮付けをやった。ネギと大根とにんじんを入れた。前回のイワシよりぜんぜんうまかった。ネギも切るの楽しい。

 

何をつくるかという目的を設定する前に、何かを切りたいという欲望を重視することによって、俺の自炊への抵抗感は消えた。社会と接点を持たず鬱々とした俺が、人を切りつける前に、野菜を切る快感を知れて本当によかった、大根には感謝してもしきれない。

 

ARuFaさんが驚くほど簡単な大根のむきかたを紹介していてめちゃくちゃ参考になるけど、とりあえず時間だけはある俺は切ることに邁進したい。