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ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

最後のキャンプの遠い思い出

8年前のゴールデンウィークにキャンプした。高校3年生男4人でキャンプした。


県庁所在地にある港からフェリーに乗って1時間ちょっとの島の浜辺にテントを張った。前日の夜に時間のあった友人とふたりでカレーの食材を買っておいた。お酒は買わなかった。まだ俺たちに酒は必要なかったのだ。花火は買った。


いっしょに買い出しに行った友人は原付バイクを持っていたので、荷物はそれに積んだ。テントを張る予定だったキャンプ場は、港の真反対にあって、島の中心にある小高い丘を超えて行かなければならなかった。車で15分くらい歩くとけっこうしんどい。
原付バイクの友人だけそれにまたがって先乗り。あとの3人はテキトーにヒッチハイクして山越えした。
キャンプ場に着いたがバイクの友人は見当たらなくて、電話したらキャンプ場の向こうに誰もいない浜辺があるから、そこにテント建てようと言う。そこならキャンプサイトの料金もかからないので即決。浜辺にテントを張った。

 

その後は釣りしてくると言って友人二人は岩場に消えていき、俺ともうひとりは海に入った、ゴールデンウィークはまだ少し水が冷たかった。
海から上がってふたりで水切りした。疲れた俺が砂浜に座っても、友人は海に石をサンゴの死骸を、投じ続ける。彼は、運動神経が良いわりに、水切りはヘタだった。
精を出している男の横に座ってその様子を眺めていたとき、ふと不安になって「俺のところに投げるなよ」と注意した直後、俺の顔面におもいっきり石が当たった。口から血が出まくった。ワザとかと思った。いまでも少し疑っている。
水切りってサイドスロー?で投げるから、リリースが遅れると石があらぬ方向に飛ぶんだね。にしたって、真横にいる俺に当てるこたあない。せっかく楽しいキャンプの幕開けで俺が痛んでしまったら場が白けるので笑ってゆるしてやった。止めど流る清か血を拭うために、誰かが持ってきていたトイレットペーパーワンロール使いきった。釣りから戻ってきた友人たちは(釣果ゼロ)、血まみれのトイレットペーパーを見て、生理かよと笑った。みんな童貞だった。



カレーをつくった。カレーは少し水っぽかったけれど、カレーが苦手という友人(そんなやつがいるんだ、彼の口癖のひとつは「カレーがみんなの好物だと思うなよ!」だった)も「これはうまい」と言っておかわりした。なんか嬉しかった。米も飯ごうで炊いた、そういや、どうやって火起こしたんだっけ。


夜になったら花火した。ロケット花火を打ち合った。空に打ち上げ花火もした。夜になっても浜辺には誰一人姿を現さなかった。あ、なんかロケット花火打ち合っているときに友人の向こう側におじさんみたいな人影が見えたっけか。

 

2つ建てたテントにふたりずつ、わかれて入った。テントの入口は互いに向け合った。
みんなテントから顔を出して話していた。夜の海風は冷たい。話もそこそこに誰かが仰向けになって空を見上げて言葉を失っていた。つられて見上げると空には無数の星がきらめいていて、全員が黙りこんでしまった。みんなおしゃべりだったし、バンド活動とかしてたし、彼らといて無言・無音になったのは、後にも先にもこのいっかいだけだ。波の音は夜空の星の通奏低音になって耳には意識されなかった。
誰からともなく、寝るか、と言ってか言わずか、寝た。つかれてたけど、波の音がうるさくテントにあたる海風がうるさかったから、うまく寝れなかった。友人は早々に寝息を立てていた


うとうとしていたら、隣のテントから悲鳴が上がった、何かと思って外に出ると、彼らはテントを移動させていた。満ちてきた海がテントに侵入したのだった。俺たちのテントは彼らのより海から離れていたからすんでのところで無事だった。友人の髪の毛は少し濡れてた。俺たち本当バカだなあと笑って、俺たちもテントを移動させてまた寝た、こんどはすんなり寝れた。


目を覚ますとテントの中に友人はいなくて、昨夜の片付けをしていた。温めてもらったカレーの残りを食べてテントを片して、浜辺を去った。



キャンプ場に入り道路に出ようとすると背後から声がした。振り返るとおっさんがいて「きみたちどこに泊まってたの?」聞かれる。
俺たちはみんなすぐに、あの浜辺は寝泊まり禁止の場所だったんだ、と気づいた。俺はどうやっておっさんから逃げようかと思案した。隣にいた友人に「走ろう」とまで言ったけど、俺以外はみんなすぐに観念している。
「昨日海で花火してただろ? あそこ入っちゃダメなんだよ」とおっさんは言う。ロケット花火打ち合ってたときに見えたおっさんの影はこのおっさんだったんだなと思う。


けっきょくみんなで2000円取られてしまった。彼に解放された後も俺は「もしかしたらあのおっさんキャンプ場の管理者でもなんでもなくて、若者の弱みを握って金ふんだくってるホームレスかもしれないぜ」と言ったんだけどみんな「まあ俺たち禁止区域にいたのは事実だろうししょうがないだろ」と言う。そもそもお金払うつもりでこの島に来たしいいじゃん、なんて言う。


帰りもヒッチハイクして帰った、軽トラの荷台に乗った。
港からの帰り道はもう何も覚えていない。