ひとつ恋でもしてみようか

いつも同じようなことを言っている

渋谷の地下は暖かくあってほしい

渋谷109は女の子のための場所だ。地下2階から地上8階までそびえる渋谷のランドマークには女の子ばかりたくさん集まる。

とはいえ、この109は通り抜けに便利だからおじさんなんかも混入する。109のエスカレーターエレベーターを利用して地上へと上がる横着者がいる。田園都市線半蔵門線東横線副都心線の渋谷駅改札口と、渋谷109の地下2階入口は一度も地上に出ることなく通行ができるので、10代から20代の娘がひしめき合うファッションダンジョンの地下フロアはおっさんの通行エリアともなっている。彼らに白い目を向ける娘はいない。彼女らにとっておっさんの109通行はごく当たり前の風景なのだ。

さらに言うと、宮益坂下付近にそびえるヒカリエの方から、道玄坂下の109までの道のりも、地下でつながっている。誰もが知っているスクランブル交差点の下を通って行き来ができる。田舎者は知っておくといい。
ぼくもおっさんのような生き物なので、ダンジョン109を通り抜けに使っていた。さいきんはユニクロが入っているビルやTOHOシネマズのある方の出口から出ることを学んだので、以前より利用回数は減ったものの、丸善ジュンク堂が第一目標のときなんか使う。アップリンク行くときとか。


まあそんな話はどうだっていい。話したかったのはダンジョン109地下入口前の夜の姿についてだ。

朝10時の開店から夜9時の閉店まで若い女たちがはびこる109、その入口前は比較的閑散としている。これは推測だが、109に向かう女たちはたとえ地下入口の方が人混みを避けてラクにビルに入れることを知っていても、地上の正面入口から入っていくのだろう。だって、そのほうがテンション上がるじゃんね!しぶや!渋谷!!SHIBUYA!!!ッて感じじゃん!!!!!
だから営業中の地下2階エントランスは閑散としているのだ、たぶん。

しかし夜になり閉店が近づいてくると、地下エントランス付近にポツポツと人が増えてくる。閉店後には20人くらいは集まっているだろう。誰が集まっているのか、ホームレスである。
雨風をしのげ、通行人の少ない夜の109地下2階エントランス前には、どこからともなくホームレスたちが集まってくるのだ。

はじめて終電間際にあそこを通ったときは驚いた。あんなにたくさんのホームレスの人たちが寝ているのを見たことがなかった。というか、上京する前はホームレスすら見たことがなかったような気がする。

しかも場所が場所だ。若い女の子たちが喜々として買い物をするビルの入口前は夜になると彼女らの父親ほどの年齢はある男たちの寝床となるのだ。実際、彼らにも娘がいて、何かの事情があって生き別れているかもしれない。「娘たち」がかわいらしく大人になるために背伸びをするビルの下、「お父さんたち」はただただ眠ることしか出来ない。
小中高生の女の子たちは夜のエントランス前にホームレスが寝泊まりしていることを知っているだろうか。


知らなくていい。知ってしまった彼女らが「そこ寝るとこじゃないんですけど」なんて「正論」を放ち、ホームレスたちの居場所がなくなってしまったらさびしい。というより、その「正論」を放つのは若い女の子たちじゃなくて、オリンピックを前にしたギョーセイだろうな。案外、彼女らはやさしいかもしれない。え、だって、ウチらが遊ばない時間っしょ?ぜんぜんいいよー寒いもんねー、寝て寝てー!

きょうみたいな寒い夜にはいつもより多くのおじさんがあそこに寝泊まりしているだろう。冬の東京の夜は寒いけれど、109地下入口前は地上よりはぜんぜん暖かい場所だし、これからもそうであってほしい。


黒柳徹子も109の地下の靴屋で靴を買うとこないだテレビで言っていた。安くて良いのよって藤田ニコルと楽しそうに話していた。